【BIWA100ウルトラウォーク】100kmウォーク挑戦記|70kmでリタイア。想像以上の過酷さ

フルマラソンなんて一生無理、そう思っていた自分が、今では3回も完走している。
だからこそ「歩くだけなら100kmもいけるんじゃないか?」と、どこかで舐めていた。

準備も万全、気持ちも十分。でも現実はそんなに甘くなかった。
今回は、そんな100kmウォークの挑戦と、70kmで止まった理由を記しておく。

よかったら準備編もあわせてどうぞ。

70kmでリタイア

正直なところ「フルマラソンを走れるんだから、100kmを歩くのは大丈夫だろう」と、心のどこかで慢心していた。
というか、完全に舐めていた。

結論、ランニングとウォーキングはまったくの別物。
本当に失礼な話だけど、ランニングの方がしんどいはずと勝手に思い込んでいた。
実際にやってみて、気づいたのはどっちも大変。これが正解。

というか、そもそも競技が違っていて、歩くと走るでは使う筋肉や動作も違う。
この教訓を忘れないためにも、今回の挑戦を振り返っていく。

BIWA100ウルトラウォークとは?

今回挑戦したのは、滋賀県の琵琶湖を舞台にした「BIWA100ウルトラウォーク 2025」。
2025年に新しく始まった、100kmの耐久ウォーキングイベントだ。
前身は「びわ湖チャリティー100km歩行大会」で、今年が第一回大会となる。

スタート地点は長浜市の豊公園。
そこから琵琶湖の湖岸沿いを南下し、大津市の大津港まで歩き切る。
制限時間は28時間以内。昼も夜も歩き続ける、まさに「自分との戦い」のイベントだ。

初心者向けには42kmのビギナー部門や親子ペア部門もあり、幅広い世代が参加できる。
コースはほぼ平坦で、琵琶湖を眺めながら自然や観光名所を楽しめるのが特徴。

挑戦までの準備

今思うと、この時点ですでにズレがあった気がする。
準備した服装は写真のとおり。

まず、1つ目の失敗はロングタイツを履かなかったこと。
理由は単純で、長時間の締めつけが苦手だから。
それだけの理由で、普通のロングパンツを選んだ。
でも今考えると、これが最初の間違いだったと思う。

周りを見ると、経験者はほとんどがロングタイツ。
よくよく考えれば当然で、長時間同じ動きを繰り返すウォーキングでは、脚をサポートするウェアのほうが有利なのは明らか。

次に、全体的に薄着すぎたこと。
夜の寒さをまったく想定できていなかった。
ロンTに薄手のフーディーだけでは、冷えに勝てない。
間にフリースや中厚手のミドルレイヤーを1枚入れるべきだった。

というのも、体が冷えるだけで、脚も動かなくなる。
たったそれだけの装備の差が、後半で大きな差になると痛感した。

スタート地点(長浜市豊公園)

BIWA100ウルトラウォーク_豊公園

BIWA100ウルトラウォーク2025のスタート地点は、滋賀県長浜市の豊公園。
長浜駅から歩いて5分ほどの場所にあり、アクセスは文句なし。
あんまり足を使いたくなかった自分にとっては嬉しい限り。。

ちなみに豊公園は、豊臣秀吉の居城・長浜城の跡地につくられた公園で、春には約600本の桜が咲き、「日本さくら名所100選」にも選ばれている。

スタート時刻は午前10時。

BIWA100ウルトラウォーク_スタート会場

9時前に到着し、受付を済ませてから開会式や展示物を軽く眺める。

BIWA100ウルトラウォーク_スタート会場2

会場の雰囲気は思っていたよりも穏やかで、参加者もみんなリラックスした様子だった。

天気は曇り。
暑くもなく寒くもなく、歩くにはちょうどいい気候だった。

初めての100kmウォーク。
けれども、緊張よりもワクワクのほうが勝っていた。人生初の100kmへの挑戦が始まる。

〜13.5km:彦根護国神社

BIWA100ウルトラウォーク_スタート

スタートして最初に目指すのは、第1チェックポイントの彦根市「護国神社」。
地元の方々の応援を受けながら、順調に歩き出した。

のどかな田園風景と、時折見える琵琶湖の景色。
朝の空気が気持ちよくて、脚も軽い。

ペースは1kmあたり12分。
1時間で約5km進む計算になる。
このペースなら24時間以内のゴールも見えてくる──と、この時はまだ余裕しゃくしゃく。

8km地点のコンビニで小休止を入れつつ、焦らずマイペースで進む。

BIWA100ウルトラウォーク_彦根城

彦根市街に入ると、観光名所も増えてくる。
彦根城や、国スポの開会式が行われた平和堂HATOスタジアムを横目に歩いていくと、ほどなく護国神社に到着。

BIWA100ウルトラウォーク_護国神社

エイドではカレーとコロッケが振る舞われ、小腹を満たす。
味は……正直、微妙だった。

BIWA100ウルトラウォーク_カレー

〜32km:ファミリーマート

次に目指すのは、第2チェックポイントのファミリーマート近江八幡白王町店。
距離は約20km。ここは少し長い区間になる。

それでもこの時点では、まだまだ元気。
外は明るく、昼の陽射しの下を気持ちよく進んでいた。
ペースも相変わらず順調で、「このままいけそう」と思っていた。

ところが、20km地点あたりでまさかの通り雨。
そういえば、彦根を出るころから空の色が少し怪しかった。

一気に強い雨が降り出し、思わず近くの木の下に避難。
すぐに持参していたレインコートを取り出してなんとかしのぐ。
それでも靴の中はびちゃびちゃ。水が染み込んで、靴下は冷たくなった。

ここで頭をよぎったのが、足裏のまめ。
皮がふやけた状態で長距離を歩くのは危険だと分かっていた。
足を気遣いながら、慎重に一歩ずつ進む。

BIWA100ウルトラウォーク_虹

雨が上がったあと、空には大きな虹が出た。
この日いちばん心が動いた瞬間だった。

ファミリーマートではバナナが振る舞われ、ありがたく2本いただいた。
そして、少し休んで、足をほぐしながら再び歩き出す。
この時点で足にはかなりの疲労感があったけれど、気持ちはまだ切れていない。
むしろ、ゴールまでは、なんとかなると思っていた。

〜42km:近江八幡市JAグリーン近江

第3チェックポイントを目指して、ファミリーマートを出発。
時刻はすでに17時を回っていて、ここからはライト点灯が義務付けられる。

暗くなっていく道をヘッドライトで照らしながら、一歩ずつ進んでいく。
昼間とは違い、気温も徐々に下がってきた。

このあたりでは、もう写真を撮る余裕はなかった。
それでもコース上には、足にダメージがきて休んでいる人の姿がちらほら見える。
そんな光景を横目にしながら、自分にはまだ関係ないと思ってて、まあ大丈夫だろう位に思ってた。
けれど、頭の片隅には「リタイア」という言葉がかすかに浮かんでいた。

BIWA100ウルトラウォーク_応援

距離にして約10km。
数字だけ見れば大したことないはずなのに、第2チェックポイントまでよりもずっと長く感じた。
寒さもあって、足の疲労はかなり深刻になってきた。

BIWA100ウルトラウォーク_JAグリーン近江

そんな違和感を抱えながら、ようやく第3チェックポイントの「JAグリーン近江」に到着。
ちなみに、42km部門はここがゴール。正直ここままでも良かった。

ここでは、たねやのお菓子と近江牛が振る舞われた。
正直言うと、どちらも小ぶりで、疲れた体には少し物足りなかった。

BIWA100ウルトラウォーク_メダリストカフェイン

ここでカフェインをチャージし、次の第4チェックポイントを目指す。

〜60km:守山美崎公園

寒さのせいもあって、42km地点を過ぎた時点で足のダメージは限界に近かった。
さらに、少し長めの休憩を取ったせいで、体がすっかり冷えきっている。
つま先はカチコチで、シューズに当たるだけで痛い。

多分というか、間違いなく、この区間が今回の100kmウォークでいちばんの地獄だった。

BIWA100ウルトラウォーク_よし笛ロード

近江八幡の市街地を抜け、再び琵琶湖の湖岸沿いへ。
しかし、車のライトこそ通るものの、道そのものはほぼ真っ暗。
次第に、自分がちゃんと前に進んでいるのか、その感覚が曖昧になってくる。
そして、この暗さが、想像以上に精神を削ってきた。

足の疲労は限界で、こまめに休憩を挟みながら進む。
道端で座り込む人、ストレッチをしている人──そんな光景も増えてきた。

眠気も重なって、意識がぼんやりしてくる。
それでも何とか歩き続け、ようやく第4チェックポイント「守山・美崎公園」に到着。

ここで振る舞われたのは、塩むすびと味噌汁。
塩むすびはカチコチだったけど、味噌汁に入れて食べるとちょうどよかった。
冷えた体に染みる味だった。

70km:守山市ダイハツ

第4チェックポイントでは、もうかなり心が折れていた。
たぶん1時間以上は休憩していたと思う。

ようやく出発しようとしたものの、寒さで体が固まりすぎて、思うように動かない。
再びストーブの前に戻って、もう一度だけ暖を取ってから再スタート。

この区間も距離にして10km。
それだけのはずなのに、永遠に感じられた。

BIWA100ウルトラウォーク_琵琶湖大橋

特にきつかったのが、琵琶湖大橋の往復だった。
たぶん「滋賀を堪能してもらう」という意味があるんだろうけど、
実際のところ、真夜中の琵琶湖大橋の坂は地獄そのもの。

しかも、出場者はGPSで経路を管理されていて、途中で引き返すと完歩扱いにならない。
つまり、逃げ場がない。

BIWA100ウルトラウォーク_カイロ

橋を渡り終えるころには、体の冷えがピークに達していた。
思わずコンビニに駆け込み、カイロを買って体に貼る。
少しでも温まったことで、なんとか足を前に出す気力を取り戻す。

動かない足を引きずりながら、第5チェックポイントに到着。
この時点では、まだ気持ちは切れていなかった。

70km地点休憩完了〜リタイア

BIWA100ウルトラウォーク_休憩所

第5チェックポイントは、これまででいちばん快適な休憩所だった。
室内で休めて、コーラやお菓子も用意されている。
冷えた体を少しずつ戻しながら、しばらく椅子に座っていた。

この時点でリタイアという選択肢はまだ頭になかった。
制限時間までの余裕はおよそ1時間ほど。
30分だけ休んで、次の第6チェックポイントを目指すつもりだった。

再び立ち上がり、歩き出して100mほど。
その瞬間、心が折れた。

足の痛みと疲労感で、もう30kmはとても歩けないと悟った。
それに、仮に歩けたとしても制限時間に間に合う保証はない。
さらに、眠気も限界で、集中力も完全に切れていた。
そしてたぶん、あれが気持ちが終わる瞬間だったと思う。

第5チェックポイントへ戻り、運営スタッフの方にリタイアを申告。
そのとき言われた「残念です」という言葉が、妙に印象に残っている。

バスにてゴール地点にワープ

BIWA100ウルトラウォーク_ダイハツチェックポイント

リタイアを伝えると、第5チェックポイントの制限時間まで待機することになった。
そして、制限時間になるとゴール地点までバスで送ってもらえるとのことだった。

やがて時間になり、バスが出発。
窓の外には、まだゴールを目指して歩く人たちの姿が見える。その横を通り過ぎながら、なんとも言えない気持ちになる。

これまでマラソンでは一度もリタイアしたことがなかった。
だからこそ、正直悔しかった。しかし、それ以上に「もう無理だ」と素直に思えた自分もいた。

BIWA100ウルトラウォーク_ゴール

ゴール地点に着くと、すでに多くの人がゴールしていた。
達成感にあふれた表情を見て、やるせない気持ちになる。

リベンジするかはわからない。
ただ、これが100kmウォークの現実なのだと思う。

セブンイレブン_油そば

帰り道、コンビニで買った油そばが妙においしかった。

終わってみて思うこと

BIWA100ウルトラウォーク_おまつり広場

70km地点でリタイアという悔しい結果に終わったけれど、この経験は決して無駄ではなかった。
むしろ、このイベントから得た気づきは多かった。

ウォーキングとランニングは別物

まず痛感したのは、ウォーキングを完全に甘く見ていたということ。
普段から走っている自分にとって、「歩くなんて楽勝だろう」と思っていたのは間違いだった。

実際にやってみると、使う筋肉もフォームもまったく違う。
足への負担は想像以上で、感覚的にはランニング以上にきつかった。

「走れるから歩ける」とは限らない。
これは今回の最大の教訓だと思う。

24時間テレビのマラソンを舐めていた

毎年、芸能人が走るチャリティーマラソンをどこか冷めた目で見ていた。
「100kmくらい、24時間もあれば走れるでしょ」と思っていた自分が恥ずかしい。

だからこそ、実際に歩いてみると、挑戦することの大変さと、続けることの苦しさを身にしみて感じる。

完歩した人を本気で尊敬するようになった

100kmを歩き切るというのは、本当にすごいこと。
ウォーキングは年齢層が高いイメージがあるけれど、実際に現場で見た人たちはみんな強かった。
歩くスピードも、気力も、ランナーと同じかそれ以上。
100kmを自分の足で歩き抜く姿に心から感動した。

70kmでも得たものは大きかった

今回は完歩できなかったけれど、それでも70kmを自分の足で進んだ。
それは間違いなく、自分の中で最長の距離。

この経験はきっとどこかで生きるはず、と思いたい。
精神的な部分かもしれないし、マラソンの脚づくりにつながるかもしれない。
どちらにせよ、この挑戦をしてよかったと思っている。

今回使用したアイテム

もし、次にこのイベントに出場するとして、次回も使えそうなアイテムをご紹介。

挑戦することに意味がある

この挑戦は完歩こそできなかったけれど、それでも確かに心に残る経験になった。
なぜなら、歩くことの難しさや、人の強さ、そして挑戦することの意味を感じられたからだ。
そして何より、それを70kmの道のりで実感できたことが、自分にとって大きな収穫だった。

最後までお付き合いいただき感謝。これからも気が向いたらのぞいてくれると嬉しい。